タマン ニケシュ さん
私のふるさと
私のふるさとは、ネパールのバグマティ州にあるシンドゥパルチョークという地域です。首都カトマンズから北東へ車で二、三時間ほど行ったところにあります。標高の高い山々に囲まれ、谷や渓流が広がる自然豊かな場所です。川のせせらぎや鳥の声が日常の音として聞こえる、とても落ち着いた環境で育ちました。
シンドゥパルチョークには、観光客が訪れる有名な場所がいくつもあります。その中でも特に知られているのが「タトパニ温泉」です。ここは昔から地元の人々だけでなく、国内外の観光客が訪れる場所で、温泉につかると疲れがとれ、健康に良いと信じられています。
また、ラングタン方面のトレッキングルートの入り口にもなっていて、美しい山の景色を楽しみたい人々が集まります。春には花が咲き、秋には澄んだ空気の中で山々がくっきりと見えるので、季節ごとに異なる魅力があります。
人々の暮らしは主に農業に支えられています。水田では稲作が盛んで、その他にもトウモロコシやジャガイモ、野菜などを育てています。農作業は家族みんなで協力して行われ、収穫の時期には村全体が活気にあふれます。
また、最近では水力発電のプロジェクトも進められており、地域の発展に少しずつつながっています。電気が届くことで、生活はより便利になり、子どもたちの勉強の環境も改善されました。
私のふるさとには、自然だけでなく文化や伝統も息づいています。村では年に何度も祭りが行われ、人々は踊りや音楽を楽しみます。特にダサインやティハールといったネパールの大きなお祭りは、家族が集まり、村全体が喜びに包まれます。お年寄りから子どもまで、みんなで料理を作り、歌を歌い、楽しい時間を過ごすのです。そうした経験は、私の心に強く残っています。
しかし、この地域は2015年のネパール大地震で大きな被害を受けました。多くの家が崩れ、道路や学校も壊れてしまいました。私の知っている人々の中にも、大切な家族を失った人がたくさんいました。その時、悲しみと同時に、人々が助け合いながら立ち上がる姿を目にしました。食べ物を分け合い、壊れた家を一緒に直し、子どもたちが勉強できるように仮設の学校を建てました。困難の中で支え合う人々の強さは、私にとって忘れられない思い出です。
今のシンドゥパルチョークは少しずつ復興し、新しい建物や道路もできてきました。観光客もまた訪れるようになり、経済も回復しつつあります。それでも、自然とともに生きるという点は変わらず、人々は素朴で温かい暮らしを続けています。
私は、このふるさとをとても誇りに思っています。雄大な山々、清らかな川、豊かな農業、そして助け合う心を持った人々。どれも私の大切な原点です。これからどこで暮らしても、シンドゥパルチョークで育った経験を忘れることはありません。私のふるさとは、私にとってかけがえのない宝物です。